歯医者が好きという方は、実はあまり多くありません。
「痛そう」 「何をされるか分からない」 「久しぶりだから恥ずかしい」 「昔嫌な思いをした」
不安の理由は人それぞれです。
僕は歯科衛生士として働く中で、さまざまな患者さんと関わってきました。
今回は、現場で実際に感じていることや、患者さんに伝えたいことを書いてみようと思います。
歯医者が苦手な理由は人それぞれです
患者さんとお話していると、不安の理由は本当にさまざまです。
- 歯を削る音が苦手
- 何をされるか分からないのが怖い
- 嘔吐反射がある
- パニック障害がある
- 痛みが苦手
- 何年も歯医者に行っていない
歯科医院で働いていると当たり前になってしまうことでも、患者さんにとっては大きな不安になることがあります。実際、厚生労働省の検討会資料にある患者調査では、歯科診療で「不安になる場面が特にない」と答えた人はわずか1.8%でした。裏を返せば、98%以上の人が何らかの場面で不安を感じているということです。特に多かったのは抜歯や手術の場面(66.6%)、歯を削る場面(51.0%)でした。決して珍しいことではなく、多くの方が同じような気持ちを抱えています。
何をされるか分からない不安を減らしたい
僕は処置を行う時、できるだけ今何をしているのかをお伝えするようにしています。
例えば、
- 今から歯石を取りますね
- 少し振動しますね
- お水が出ますね
- あと少しですよ
こういった声掛けです。
歯科医院では口を開けている時間も多く、患者さんは質問しづらいことがあります。
少しでも安心していただけるように、できるだけ説明しながら進めることを心がけています。
パニック障害の患者さんとの経験
以前、パニック障害のある患者さんを担当したことがありました。
その方は「無音になると不安になる」とお話されていました。
そのため僕は、
- 今何をしているのか
- 次に何をするのか
- あとどれくらいで終わるのか
をできるだけお伝えしながら処置を行いました。
クリーニング終了後、その患者さんが涙を流しながら喜んでくださったことは今でも印象に残っています。
嘔吐反射が強い患者さんへ
レントゲン撮影や型取りが苦手な方もいらっしゃいます。
嘔吐反射が強い方にとっては、口の奥に器具が入るだけでも大変なことがあります。
だからこそ僕は、できるだけやり直しが少なくなるよう心がけています。
患者さんがつらい思いを何度も繰り返さなくて済むようにしたいからです。
歯を削る音が苦手な患者さんもいます
歯を削るタービンの音が苦手という患者さんも少なくありません。
中にはイヤホンを持参される方もいらっしゃいました。
もちろん、治療に支障がない範囲であれば問題ありません。
患者さんが少しでも落ち着いて治療を受けられることの方が大切だと思っています。
患者さんに合わせて対応を変えることもあります
患者さんによって、不安に感じることは違います。
耳が聞こえづらい方の場合は、聞き取りやすいように少し大きめの声でお話したり、表情が見えるよう配慮することもあります。
僕たちは一人ひとりに合わせて、少しでも安心していただける方法を考えながら対応しています。
不安が強い方には鎮静法という選択肢も
声掛けだけでは不安を抑えきれないほど、恐怖心が強い方もいらっしゃいます。
そういった場合、歯科医院によっては「笑気吸入鎮静法」や「静脈内鎮静法」という方法を用意していることがあります。笑気ガスを吸入したり、鎮静薬を点滴で投与したりすることで、リラックスした状態で治療を受けやすくする方法です。
すべての歯科医院で対応しているわけではありませんが、「どうしても不安で通えない」という方は、こうした方法に対応している歯科医院を探してみるのも一つの選択肢です。
痛いことやしみることは僕たちも分かっています
歯茎が大きく腫れている方や、知覚過敏がある方のクリーニングは痛みを伴うことがあります。
正直に言うと、僕たちも「ここは痛そうだな」「しみそうだな」と分かっています。
だからといって患者さんをいじめたいわけではありません(笑)
むしろ、
「できるだけ負担を減らしたい」
「できるだけ優しく処置したい」
そう思いながら対応しています。
不安なことは遠慮せずに伝えてください
次のようなことに心当たりがある方は、遠慮せずに伝えてください。
- パニック障害がある方
- 嘔吐反射がある方
- 音が苦手な方
- 耳が聞こえづらい方
- 歯医者が怖い方
事前に教えていただけることで、僕たちも配慮しやすくなります。
もし話をしっかり聞いてくれない、質問しづらいと感じる場合は、歯科医院との相性が合っていない可能性もあります。
歯科医院選びに悩んでいる方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
よくある質問
Q. 歯医者が怖くて何年も行けていません。それでも大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。むしろブランクが長い方ほど、事前にその旨を伝えていただけると助かります。無理に一度で全部終わらせようとせず、様子を見ながら進める歯科医院も多いです。
Q. 治療中に「やめてほしい」と言ってもいいですか?
A. もちろんです。手を挙げるなどの合図を事前に決めておくと、口を開けたままでも伝えやすくなります。遠慮せずスタッフに相談してください。
Q. 笑気吸入鎮静法や静脈内鎮静法はどこの歯科医院でも受けられますか?
A. すべての歯科医院で対応しているわけではありません。対応可能かどうかは事前に電話やホームページで確認することをおすすめします。
Q. 子どもの歯科恐怖症にも同じような配慮はありますか?
A. 基本的な考え方は同じで、今何をしているかを分かりやすく伝えることが大切です。小児歯科を専門にしている医院では、子ども向けの声掛けや進め方を工夫しているところもあります。
まとめ
- 歯科診療に何らかの不安を感じる人は98%以上、決して珍しいことではない
- 不安の理由は人それぞれ、パニック障害・嘔吐反射・音への苦手意識などさまざま
- 今何をしているかを伝える声掛けだけでも、不安は軽減できる
- 不安が強い場合は笑気吸入鎮静法・静脈内鎮静法という選択肢もある
- 不安なことは我慢せず、事前に伝えることが一番の近道
歯科衛生士は患者さんを困らせたり、痛がらせたりしたいわけではありません。
むしろ、「どうしたら少しでも楽になるかな」と考えながら日々患者さんと向き合っています。
歯医者に不安がある方も、まずはその気持ちを伝えてみてください。きっと力になってくれる歯科医院があると思います。歯石や治療費について気になる方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
参考・引用
厚生労働省「安心と希望の医療確保ビジョン」検討会資料(歯科診療で不安になる場面に関する患者調査):https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/11/dl/s1110-5e14.pdf




