歯科衛生士になりたての頃と今とでは、患者さんを見る視点が大きく変わったと感じています。
新人時代の僕は、歯周ポケットや出血率、磨き残しなどの数字を見ることで精一杯でした。
もちろん今でも大切な指標です。
ただ、経験を重ねる中で気付いたことがあります。
それは、患者さんは口の中だけで生活しているわけじゃないということです。
新人時代は数字ばかり見ていた
新人の頃は、とにかく目の前の結果を見ることで精一杯でした。
出血が多い。 磨き残しが多い。 歯石が付いている。
だから、
「もっと磨いてくださいね」
そんな指導をすることが多かったと思います。
今思えば、口の中の結果だけを見ていたのかもしれません。歯石ができる仕組みについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
同じ結果でも理由は人それぞれ
今は結果だけで判断しないようにしています。
例えば前回は出血が少なかった患者さんが、半年後や1年後に来院された時に出血が増えていたとします。
そんな時は、
「何かありましたか?」
と聞くようにしています。
実際に話を聞いてみると、
- 子育てで忙しかった
- 夜勤続きだった
- 体調を崩していた
- 仕事が忙しかった
など、本当に人それぞれです。
中には、
「正直、口の中どころじゃなかったです」
と話してくださる方もいます。
そんな話を聞くと、数字だけでは分からないことがたくさんあるなと思います。
患者さんによって伝え方も変える
歯科衛生士になったばかりの頃は、全員に同じような説明をしていました。
でも今は違います。
例えば磨き残しが多い患者さんに、細かい磨き方やフロスの使い方を一気に説明しても、なかなか続きません。
そんな時は、
「まずは歯磨きの回数を増やしてみましょう」
「まずは奥歯を意識してみましょう」
というように、できそうなことからお話します。
逆に意識の高い患者さんには、歯間ブラシやフロスの使い方まで細かくお伝えすることもあります。使い分けについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
患者さんによって正解は違うと思っています。
僕が患者さんによくする声かけ
患者さんとの会話も、昔より意識するようになりました。
例えば数年ぶりに来院された患者さんでも、前回と同じように良い状態を維持できている方がいます。
そんな時は、
「久しぶりの歯医者さんなのに、よく磨けていますね」
とお伝えします。
実際にフロスや歯間ブラシを頑張っていたり、自分に合う歯ブラシを見つけていたりする方もいます。
そういう努力が結果に出ているのを見ると、こちらも嬉しくなります。
反対に、出血は多いけれど歯垢は少ない患者さんもいます。
そんな時は、
「今日は一生懸命磨いてきましたか?」
と少し冗談を交えながらお話することもあります。
患者さんとの距離感を見ながらですが、
「今日ぐらい磨いてくれたら嬉しいです」
とお伝えすると、笑いながら頑張りますと言ってくださる方もいます。
定期検診のハードルは少しずつ下げる
何年も歯医者さんに来ていない患者さんに、
「3か月ごとに来てください」
と言うのは簡単です。
でも、いきなりその頻度で通うのは難しい方もいます。
だから僕は、
「まずは半年に1回を目標にしましょう」
とお話することが多いです。
年に2回でも、年に1回よりは大きな前進です。
そこから意識が変わっていけば、3か月や4か月ごとの定期検診にも繋がると思っています。検診の頻度について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
共感した上で伝える
仕事に限らず、普段のコミュニケーションでもそうですが、僕はまず共感することを大切にしています。
肯定だけでもない。
否定だけでもない。
まず相手の話を聞く。
その上で提案する。
これは歯科医療の分野でも「共感的理解」と呼ばれる考え方に近いかもしれません。相手そのものを理解しようとする姿勢が、患者さんが本音を話してくれるきっかけになると言われています。
具体的には、患者さんの言葉をそのまま繰り返す「オウム返し」を意識しています。例えば「冷たいものがしみるんです」と言われたら、「冷たいものがしみるんですね」と一度受け止めてから話を進めます。それだけで、ちゃんと話を聞いてもらえていると感じてもらいやすくなると思っています。
歯科衛生士になりたての頃は、それがなかなかできませんでした。
でも今は、患者さんは口の中だけで生活しているわけじゃないと思っています。
仕事や家庭、体調など、それぞれに事情があります。
だからこそ、その人の生活や背景も含めて考えながら関わっていきたいと思っています。
よくある質問
Q. 患者さんの生活背景を聞くことは、治療にどう影響しますか?
A. 出血や磨き残しなどの数値だけでは分からない事情を知ることで、その人に合った声かけやペース配分ができるようになります。押し付けの指導より、続けやすい提案につながると感じています。
Q. 定期検診の間隔をいきなり縮めるのが難しい患者さんには、どう伝えますか?
A. 「まずは半年に1回」など、今より少しだけ前進できる目標から提案するようにしています。年1回よりは年2回の方が、口の中の変化にも早く気づけます。
Q. 「共感的理解」とはどんな考え方ですか?
A. 相手の状況や気持ちをまず理解しようとする姿勢のことです。歯科医療の現場でも、患者さんが本音を話しやすくなるきっかけになると言われています。
Q. 磨き残しが多い患者さんへの指導で意識していることは?
A. 一度に全部を伝えず、「まずは歯磨きの回数を増やす」など、できそうなことから提案するようにしています。意識の高い方には歯間ブラシやフロスの使い方まで踏み込んでお伝えします。
まとめ
- 口の中の結果だけでなく、その背景にある患者さんの生活まで見るようになった
- 同じ結果でも理由は人それぞれ、決めつけずにまず話を聞く
- 患者さんによって伝え方・目標のハードルを変える
- オウム返しなど、共感を伝える具体的な技術も意識している
それでも昔より、患者さんを見る視野は少し広くなった気がしています。




