「歯石取りって、なんで1回で終わらないんだろう?」
そう思ったことはありませんか。
結論からいうと、保険診療の点数の仕組み上、少しずつ分けて行う方が合理的になっているからです。それに加えて、歯ぐきの中に隠れた歯石は、見えない範囲を手の感覚だけで探る難しさがあることも関係しています。
この記事では、現役歯科衛生士として現場で感じていることをもとに、歯石取りが複数回に分かれる理由と、実際にどんな工夫をしているかをお伝えします。
歯石そのものについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
保険診療の点数の仕組み
歯科の保険診療には、細かく点数(治療費の単位)が定められています。歯石取り(スケーリング)は「3分の1顎」を単位として点数が決まっており、同時にそれを超えて行うと、超えた分の点数は少なくなる仕組みになっています。
さらに、同じ部位を2回以上処置した場合、2回目以降の点数は半分になるというルールもあります。
つまり、「1回で全部やってしまう」よりも「少しずつ分けて行う」方が、この点数の仕組みに沿った、合理的な進め方になっているということです。「何度も通わせてお金を稼ごうとしている」というわけでは決してありません。
縁下歯石は「見えない」からこそ難しい
歯石には、歯ぐきより上に見えている「縁上歯石」と、歯ぐきの中に隠れている「縁下歯石」があります。
縁上歯石は目で見て取り除けますが、縁下歯石は歯ぐきの中に隠れているため、目で見ることができません。プローブや超音波スケーラー、手用スケーラーの感覚を頼りに、手探りで確認しながら処置を進めています。
正直にお伝えすると、もちろん全部取りたい気持ちでやっています。ただ、見えない範囲を扱うからこそ、感覚だけに頼らず、段階を踏んで確認しながら進めることを大切にしています。歯周ポケットが深い場合など、必要に応じてレントゲンで骨の状態を確認することもあります。
歯ぐきの状態を見ながら段階的に進める理由
僕自身が現場でよく行っている進め方の一例を紹介します。
例えば、歯周ポケット(歯と歯ぐきの間の溝)が4mm程度の場合、まずは見えている縁上の歯石を先に取り除きます。そのうえで、精密検査を行い、患者さんにセルフケア(歯磨き)を見直してもらいます。
プラークコントロールが改善して炎症が引いてくると、歯ぐきの腫れが引いて、ポケットが浅くなり、縁下の歯石が見えやすく(触れやすく)なります。そのタイミングで、改めて縁下のスケーリング・ルートプレーニング(SRP)に進む、という流れです。
一度に無理をして深追いするより、歯ぐきの状態に合わせて段階を踏む方が、結果的に体への負担も少なく、しっかり取り切れると感じています。
少ない回数で終わらせたい、という本音
とはいえ、正直な気持ちとしては、できるだけ少ない回数で終わらせてあげたいという思いもあります。何度も通っていただくのは、患者さんにとって負担になることも理解しています。だからこそ、いつも丁寧な処置を心がけています。
ただ、診療時間には枠があるため、汚れが多いとその分時間がかかってしまいます。逆に、日頃からセルフケアをしっかりしていただけていると、予定していた時間枠より早く処置が終わることもあります。
患者さんとの二人三脚でもある
歯石取りがうまく進むかどうかは、僕たちの技術だけで決まるものではありません。
日々のセルフケアの状態によって、炎症の引き方や次の処置に進めるタイミングが変わってきます。だからこそ、歯石取りは歯科衛生士と患者さんの、いわば二人三脚だと感じています。
「何度も通うのは大変」と感じるかもしれませんが、その分、歯ぐきの状態を確認しながら、無理のない範囲で丁寧に進めているのだと知っていただけると嬉しいです。日々のセルフケアを見直したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
僕たちがやっていること
正直な話をすると、頑固にこびりついていた歯石や着色が、するりと取れた瞬間は、僕自身も何とも言えない爽快感があります。「よし、取れた」という達成感は、この仕事を続けていて感じる小さな喜びの一つです。
何より嬉しいのは、処置の前後で患者さんに実感してもらえた瞬間です。「舌で触ってみてください」とお伝えすると、処置前後のツルツル感の違いに「全然違う!」と驚かれることがよくあります。そのリアクションを見られることが、この仕事の一番のやりがいだと感じています。
よくある質問(FAQ)
Q. 歯石取りはなぜ1回で終わらないのですか?
A. 保険診療の点数の仕組み上、少しずつ分けて行う方が合理的な設計になっています。また、歯ぐきの中に隠れた縁下歯石は見えない範囲を手探りで扱うため、段階を踏んで進める必要があります。
Q. 何度も通わせて稼ごうとしているのですか?
A. そうではありません。保険診療では、同じ部位の処置を繰り返すと点数が下がる仕組みになっており、歯石取りの処置そのものについては、回数を分けても医院側が得をする設計にはなっていません。歯ぐきの状態に合わせて、丁寧に進めるための分割です。
Q. 縁下歯石はどうやって取り除くのですか?
A. プローブや超音波スケーラー、手用スケーラーの感覚を頼りに、手探りで確認しながら処置します。目で見えない範囲だからこそ、慎重に段階を踏んで進めています。必要に応じてレントゲンで確認することもあります。
Q. 自分のセルフケアは歯石取りに影響しますか?
A. 影響します。セルフケアの状態によって炎症の引き方が変わるほか、診療時間の枠内で処置が早く終わることもあります。歯科衛生士と患者さんの二人三脚で進めるものだと考えています。
Q. 歯石取りの際に痛みはありますか?
A. 歯ぐきに炎症がない状態であれば、基本的に強い痛みはほとんど感じません。ただし歯周病が進んで歯ぐきが腫れている場合や、縁下歯石を扱う場合は、しみるような感覚や痛みを伴うことがあります。痛みが強い場合は、麻酔を使用しながら処置を進めることもあるので、遠慮なく伝えてください。
Q. 歯石取りの間隔はどれくらい空けるのが一般的ですか?
A. お口の状態や保険診療のルールによって異なりますが、1〜2週間程度の間隔で数回に分けて進めることが多い印象です。セルフケアの状態が良ければ、間隔を空けずに進められることもあります。詳しい間隔は担当の歯科医師・歯科衛生士に確認するのが確実です。
まとめ
- 保険診療の点数の仕組み上、分けて行う方が合理的になっている
- 縁下歯石は見えない範囲を手探りで扱うため、段階を踏む必要がある
- 歯ぐきの状態を見ながら、縁上→プラークコントロール改善→縁下という流れで進めることがある
- できるだけ少ない回数で終わらせたいという本音もある
- セルフケア次第で、処置が早く終わることもある
- 歯石取りは歯科衛生士と患者さんの二人三脚でもある
- 取れた瞬間の達成感、患者さんのリアクションがやりがいになっている
何度も通うのは大変かもしれませんが、それには理由があります。この記事が、少しでも歯石取りへの理解につながれば嬉しいです。



