歯科衛生士として働き始めた頃、僕は何度も「自分は仕事ができないのではないか」「歯科衛生士に向いていないのではないか」と思っていました。
失敗するたびに落ち込み、自分を責めていました。今振り返ると、当時の僕は必要以上に自分を追い込んでいたように思います。
この記事では、新卒時代に失敗ばかりだった僕が今だからこそ伝えたいことを書いてみようと思います。
新卒時代は失敗ばかりだった
新卒時代の僕は、とにかく失敗が多かったと思います。
印象採得で指示を勘違いしてしまったこともありました。超音波スケーラーの力加減がうまくできず、患者さんに不快な思いをさせてしまったこともあります。診療補助の場面でも、自分の未熟さを痛感することが何度もありました。
そのたびに落ち込み、「自分は歯科衛生士に向いていないのではないか」と考えていました。実際、国立保健医療科学院が全国の歯科衛生士養成校の卒業年次生を対象に行った調査でも、就職に対して最も不安に感じている要素は「自分の技術・知識不足」で、どの学年区分でも半数を超えているという結果が出ています。当時の僕の不安は、決して自分だけの特別な悩みではなかったのだと思います。
一番つらかったのはミスではなかった
今思うと、一番つらかったのはミスそのものではありませんでした。失敗するたびに自分を責め続けていたことです。
周りと比べては落ち込み、「どうして自分だけできないんだろう」「なんでこんなに頑張っているのにうまくいかないんだろう」そんなことばかり考えていました。当時は本気で、自分は歯科衛生士に向いていないのかもしれないと思っていました。
報連相が苦手で一人で抱え込んでいた
今だから笑って話せますが、新卒時代の僕は報連相が苦手でした。怒られるのが怖かったからです。
ミスをしたら怒られる。分からないことを聞いたら怒られる。そんなことばかり考えていました。だから本当は相談した方がいいことでも、一人で抱え込んでしまうことがありました。
今振り返ると、それは自分本位な考えだったと思います。報連相をしないことで困るのは自分だけではありません。患者さんや先輩、周りのスタッフにも迷惑がかかります。
今なら迷わず言えます。分からなかったら聞こう。失敗したらすぐ相談しよう。その方が何倍も早く解決できます。
印象採得も歯ブラシ指導も苦手だった
専門学校の頃から模型実習や臨床実習で印象採得は経験していました。それでも実際の患者さん相手になると上手くいかないこともありました。
正直、苦手でした。学校の休み時間を使って先生にお願いし、練習させてもらったこともあります。社会人になってからも休憩時間に練習していました。
今では普通に行っていますが、最初からできたわけではありません。結局、数をこなして経験を積むしかありませんでした。
技術だけではありません。患者さんへの説明も苦手でした。歯ブラシの当て方一つ説明するだけでも緊張していました。今思うと恥ずかしいくらいです。
それでも患者さんと毎日話しているうちに、少しずつ説明できるようになりました。経験って本当に大事なんだなと思います。
今振り返ると余裕がなかった
もちろん、技術的に未熟だった部分はあったと思います。ただ今振り返ると、それ以上に心と体に余裕がありませんでした。
常に時間を意識し、失敗を恐れながら働いていました。焦れば焦るほどミスは増えます。ミスをするとさらに焦ります。当時の僕は、その悪循環に陥っていたのだと思います。
もし「向いていない」と感じているなら、それは適性の問題ではなく、職場環境や余裕のなさが原因になっていることもあります。職場選びについてはこちらの記事でも詳しく書いています。
患者さんの「ありがとう」に救われた
新人時代は覚えることが本当にたくさんあります。時間も守らなければいけません。ミスもします。精神的にきつかった時期もありました。
そんな時に救われたのが患者さんの言葉です。
「ありがとう」
たったそれだけです。でも、その一言だけで「やっていて良かったな」「また頑張ろう」と思えました。今でも患者さんから感謝の言葉をいただくと嬉しいです。
一般企業を経験して気づいたこと
その後、僕は一度歯科業界を離れて一般企業へ転職しました。しかし、職業が変わったからといって失敗がゼロになったわけではありませんでした。
焦れば確認を忘れることもありました。小さなミスをして落ち込むこともありました。その時に気付いたのは、歯科衛生士に向いていないのではなく、焦るとミスをしやすい自分の特性だったということです。
詳しくはこちらの記事でも書いています。
その後、僕は再び歯科衛生士として働くことを選びました。当時の詳しい経緯はこちらの記事で紹介しています。
今でもミスをしないわけではない
正直に言うと、今でも小さなミスをすることはあります。器具を落としてしまったり、電子カルテの入力を忘れてしまったりすることもあります。
ただ、新卒時代との違いは確認する習慣が身についたことです。過去の失敗を経験したからこそ、一つひとつ確認しながら仕事をするようになりました。そのおかげで大きなミスにつながることはかなり減ったように思います。
できないことは、できないと言おう
新人時代の自分に一番伝えたいことです。
できないことは、できないと言う。分からないことは聞く。失敗したら謝る。当たり前のことかもしれません。でも社会に出ると、その当たり前が意外と難しいです。
そして、その当たり前が信頼につながります。できないことを隠すより、正直に話した方が周りは助けてくれます。
失敗した経験は無駄じゃなかった
当時は失敗するたびに落ち込み、自分を否定していました。しかし今振り返ると、その経験が今の自分を支えてくれている部分もあります。
失敗したからこそ確認するようになりました。失敗したからこそ患者さんへの配慮を意識するようになりました。失敗したからこそ焦らないことの大切さを学びました。
そして今振り返ると、新卒時代の僕は必要以上に背伸びしていました。できるように見せたい。怒られたくない。失敗したくない。そんなことばかり考えていました。
でも本当に大切だったのは素直さだったと思います。できないことを認める。助けを求める。感謝する。結局、それが一番成長できる近道でした。
よくある質問(FAQ)
Q. 新卒の歯科衛生士がミスばかりするのは普通ですか?
A. 珍しいことではありません。全国調査でも、卒業年次生の最大の不安要素は「自分の技術・知識不足」で、半数を超えています。僕自身も印象採得やスケーラーの力加減など、新卒時代は失敗の連続でした。
Q. 歯科衛生士にならなきゃよかったと思うことはありますか?
A. 新卒時代は正直、そう思ったこともあります。ただそれは職業そのものへの後悔というより、余裕のなさや職場環境からくる一時的な感情だったと今は感じています。振り返れば、あの経験があったからこそ今の自分があります。
Q. 「向いていない」と感じたら転職を考えるべきですか?
A. すぐに転職を考える前に、適性の問題なのか、余裕のなさや職場環境の問題なのかを一度切り分けてみることをおすすめします。僕の場合は後者であることも多かったです。
Q. 報連相が苦手な場合、どうすればいいですか?
A. 「怒られるかもしれない」という不安が先に立つ気持ちはよく分かります。ただ、相談しないことで周りに迷惑がかかる方が結果的に大きな問題になりやすいです。まずは小さなことから聞く練習をしてみてください。
Q. 印象採得が上手くならず不安です。どうすれば克服できますか?
A. 僕自身、学生時代も社会人になってからも練習を重ねてようやくできるようになりました。近道はなく、数をこなすことが結局は一番の上達方法だと思います。
Q. 一般企業に転職すればミスは減りますか?
A. 業界を変えても、焦るとミスをしやすいといった自分の特性は変わりません。僕自身、一般企業でも同じような失敗を経験しました。
Q. 新卒時代の自分に伝えたいことは何ですか?
A. 「一人で抱え込まなくていい」ということです。できないことは、できないと言っていいですし、分からないことは聞いていいのです。
まとめ
もし今、失敗ばかりで落ち込んでいるなら。自分は歯科衛生士に向いていないと思っているなら。少し立ち止まって考えてみてください。
本当に向いていないのでしょうか。それとも、少し疲れているだけでしょうか。
僕も新卒時代は何度も同じように悩みました。そして今でも完璧ではありません。それでも歯科衛生士を続けています。
もし新卒時代の自分に一言だけ伝えるなら、「一人で抱え込まなくていい」です。
報連相が苦手でも大丈夫。印象採得が苦手でも大丈夫。歯ブラシ指導が下手でも大丈夫。少しずつ経験を積めば必ず成長できます。
忙しい時ほど、今でも心の中でこう唱えています。
「落ち着け、焦るな」
そして困った時は素直に周りを頼ってください。もし今の職場での悩みが「向いていない」以外の理由に思い当たるなら、情報収集から始めてみるのもひとつの方法です。
もしこの記事が、今悩んでいる誰かの背中を少しでも押せたら嬉しいです。





