歯科衛生士として働いていると、自費診療について患者さんへ説明する機会があります。
しかし、自費診療と聞くと「売り込み」のようなイメージを持つ方もいるかもしれません。
僕自身、新人の頃はお金のかかる処置を提案することに少し抵抗がありました。
ですが今は、自費診療は売るものではなく、患者さんに選択肢を伝えるものだと考えています。
今回は、現役歯科衛生士として自費診療を説明するときに意識していることを、実際にあったエピソードを交えてお話しします。
自費診療を提案することに抵抗があった
新人の頃は、自費診療について説明することが苦手でした。
「売り込みと思われないかな?」
「断られたら気まずいな…」
そんな気持ちがあったからです。おそらく当時の僕は、提案することを「お願いする」ことだと勘違いしていたのだと思います。
ですが経験を重ねる中で、自費診療は無理に勧めるものではなく、患者さんが選択できるように情報を伝えることが大切だと感じるようになりました。選ぶかどうかを決めるのは、あくまで患者さん自身です。僕の役割は、判断材料を過不足なく渡すことだと思うようになってからは、説明することへの抵抗もかなり減りました。
大切なのは価値を伝えること
自費診療を説明するとき、処置の内容だけを説明しても患者さんには伝わりにくいことがあります。
例えばエアフローであれば、単に「着色を除去できます」と説明するだけでは魅力は伝わりません。それは”機能”の説明であって、患者さんが本当に知りたいのは「自分の生活がどう変わるか」だからです。
僕はできるだけ、患者さんがどんなメリットを得られるのかを意識して説明するようにしています。
「一度お口の中をリセットして、そこから綺麗な状態を維持していきませんか?」
そんな風にお話しすることもあります。着色の仕組みやセルフケアでの落とし方については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
エアフロー以外でも同じことを意識している
「価値を伝える」という考え方は、エアフローに限った話ではありません。当院で扱っている他の自費メニューでも、同じように意識しています。
フッ素塗布であれば、「歯を強くします」で終わらせず、市販の歯磨き粉との濃度の違いや、なぜ定期的に受けた方がいいのかまで、具体的に説明するようにしています。
ホワイトニングは特に「どこまで白くなるか」という期待値のズレが起きやすいメニューです。「芸能人みたいに真っ白」ではなく、自然な白さや清潔感を目指すものだと、事前にすり合わせることを大切にしています。
ブルーラジカルのような新しい治療は、仕組みや厚生労働省の認可状況まで含めて説明することで、「よくわからないけど勧められた」という不安を減らせると感じています。
メニューが変わっても、意識していることは同じです。「何をするか」より先に「なぜそれが必要か」「受けたらどう変わるか」を伝える。それだけで、患者さんの受け止め方はずいぶん変わる気がしています。
実際にあった患者さんとのエピソード
先日、かなり着色が付着している患者さんを担当しました。
タバコやコーヒーの影響もあり、歯の表面には濃い着色が見られました。しばらく歯科受診から遠ざかっていた方でもありました。
エアフローをご提案したところ、最初は料金面もあり少し迷われている様子でした。
そこで僕は、久しぶりの歯科受診であることも踏まえ、こうお話ししました。
「せっかく久しぶりに来ていただいたので、一度お口の中を綺麗にリセットしてみませんか?」
「着色は予防を続けることで付きにくくすることもできますよ。」
結果として患者さんは処置を受けてくださり、鏡を見た瞬間にとても喜んでくださいました。「こんなに変わるんですね」という一言が、今でも印象に残っています。
自費だからこそ結果に責任を持つ
自費診療は、患者さんが追加で費用を負担して受ける処置です。
だからこそ僕は、お金をいただく以上、生半可な気持ちではできないと思っています。
処置前の説明はもちろん、処置そのものにも責任を持つ。
そして「やって良かった」と思っていただける結果を目指す。
それが自費診療を担当するうえで大切なことだと考えています。
経営目線の考え方との違い
歯科医院向けのコンサル記事を見ると、「自費率を上げるために対象患者を絞り込む」「トークスクリプトを用意して声掛けする」といった、経営・数字目線の内容がよく出てきます。中には「話を聞いてくれない患者さんより、集中してくれる患者さんだけを残した方がいい」という、かなり割り切った考え方も紹介されていました。
効率だけを考えれば、そういう発想も一理あるのかもしれません。
ですが僕自身は、目の前の患者さん一人ひとりに、その方に合った価値を伝えることを大切にしたいと思っています。ターゲットを絞り込むより先に、目の前の人がどんな悩みを持っているかを聞くことの方が、結果的に信頼につながる気がしているからです。
どちらの考え方が正しいかを決めるのは、この記事を読んでくださっている皆さんだと思います。
ただ、この向き合い方を続けてきた結果として、実際に自費診療のインセンティブという形で数字にも表れています。詳しい実績はこちらの記事で紹介しています。
売り込むためではなく、患者さんのためを考えた結果として売上につながる。そんな順番を、これからも大切にしていきたいです。
患者さんの変化が一番嬉しい
今回嬉しかったのは、着色が取れたことだけではありません。
綺麗になった歯を見た患者さんが、今まで気にしていなかった詰め物の変色に気付き、「これもやり直したいですね」と話してくださったことです。
僕はその言葉を聞いて、お口の中に少し興味を持っていただけたのかなと感じました。
歯科衛生士として本当に嬉しいのは、着色が取れたという結果そのものより、患者さんがお口の健康に関心を持つきっかけを作れた瞬間かもしれません。
まとめ
自費診療は、無理に勧めるものではありません。
患者さんが納得したうえで、自分に合った選択をするための一つの手段です。
僕自身も、これからも価値を正しく伝えながら、一人ひとりの患者さんに合った提案をしていきたいと思います。
そして何より、「来て良かった」と思っていただける診療を目指していきたいと思います。
参考・引用
- 経営視点での自費診療提案の考え方:船井総合研究所「歯科衛生士が自費を呼ぶ医院が行う”たった3つ”のポイント」
- 患者ターゲティングの考え方:歯科経営のススメ「【歯科・自費診療】患者別のアプローチ方法」






